【事業承継・M&A】会社の売却価格とは?どう決まる?
会社売却を検討している経営者にとって、気になるのは「どれくらいの価格で売れるのか」でしょう。
結論を言うと、中小企業の売却価格には相場がなく、純資産や利益によって企業価値を算定し、売却価格を決めます。
そこで今回はM&Aでの売却価格の決まり方、つまり企業価値の算定方法を紹介します。
会社の売却価格を左右する要素
売り手としては「できるだけ高く売りたい」というのが本音ですよね。
まずは相場を知りたいところですが、中小企業のM&Aでは平均的な売買価格は存在しません。
このような要素によって、企業価値が変動します。
- 業績・収益
- 顧客リスト、取引先リスト
- 特許、ノウハウ
- 従業員の技術
- 経営者のビジョン
要素をもとに企業価値を算定して売却価格をすり合わせ、売り手と買い手が合意した売却金額となります。
売却価格に関係する要素を見ていきましょう。
業績、収益
会社の業績は売却価格に大きな影響を与えます。
買い手が「利益を期待できる」と考えれば、その分売却価格が上がる可能性があります。
利益を増やすだけでなく、負債を解消するのも重要なポイントです。
簿外債務や訴訟問題・過剰在庫は、会社売却を検討し始めた段階でできる限りなくすようにしましょう。
顧客リスト、取引先リスト
買い手候補がM&Aしたい目的は新規事業参入、というケースがよく見られます。
新しくビジネスを始める場合、顧客を集めるには時間的・金銭的コストがかかり、リスクも上がってしまいます。
そのため、すでに多くの顧客リストを持っている企業は魅力的に映ります。
同じように、取引先と信頼関係が築かれている企業をM&Aすれば、取引先を新規開拓する手間が省けます。
特許、ノウハウ
他社がマネできないような強みを持っている場合、高く評価されます。
例えば特許やノウハウなど、”自社ならでは”をアピールしましょう。
従業員の技術
M&Aでは従業員も引き継ぐため、専門的な経験・知識を持っている従業員も売却価格を左右します。
ゼロから従業員を採用・教育するにはコストがかかるため、買い手にとってそのまま承継できるのはメリットとなります。
経営者のビジョン
経営理念・ビジョンはM&Aにあまり影響しないように思えます。
しかし実際はビジョン実現の手段として、M&A・事業承継を選ぶ経営者もいます。
ビジョンが近ければ経営統合も比較的スムーズで、M&A後の離職や売上低迷を回避できます。
経営者のビジョンは金額・数字として表れないものの明確にしておくことで、共感した企業が高く評価してくれる可能性があります。
企業価値の算定方法
前項では会社の売却価格が左右される要素を説明しましたが、では具体的にどのように企業価値を算定していくのでしょうか。
企業価値を評価する方法は大きく3つに分けられます。
- コストアプローチ
- マーケットアプローチ
- インカムアプローチ
中小企業のM&Aでは主にコストアプローチが使われますが、それぞれ詳しく見ていきましょう。
純資産を基準とする「コストアプローチ」
「コストアプローチ」とは純資産を基準に企業価値を算定する方法です。
賃借対照表の資産と負債である純資産に注目するため「ストックアプローチ」や「ネットアセットアプローチ」とも呼ばれます。
比較的簡単に計算できるというメリットの反面、将来の利益を考慮していないというデメリットがあります。
コストアプローチの手法には「簿価純資産法」と「時価純資産法」があります。
簿価純資産法
「簿価純資産法」は資産から負債を差し引いた純資産(帳簿上の資産−負債=純資産)を基準にして企業価値を算定する手法です。
簿価純資産方は誰が評価を行っても同じ結果になり、他の手法と比べて容易に算出できます。
しかし、現時点での純資産をもとにしているため、成長性は価値に含まれません。
他の手法と併用して企業価値を評価することが望ましいです。
時価純資産法
「時価純資産法」は時価として再評価した純資産を基準にして企業価値を算定する手法です。
貸借対照表のデータを参考とし、資産・負債を時価換算します。
- 売掛金、受取手形
- 棚卸資産
- 有価証券
- 有形固定資産(土地、建物)
- 買い掛け金
- 賞与引当金
- 退職給与引当金
- 未払いの税金
特に土地・建物・有価証券に含み損・含み益がある場合は、簿価純資産より正確な評価に近づきます。
ただし「貸借対照表に含まれない価値は反映できない」「将来性を考慮していない」などのデメリットもあります。
市場価格を基準とする「マーケットアプローチ」
「マーケットアプローチ」とは市場価格を基準に企業価値を算定する方法です。
似た会社を参考にするため客観性が高いものの、類似する会社がない場合は向いていません。
マーケットアプローチの手法には「類似会社比準法」と「市場株価法」があります。
類似会社比準法
「類似会社比準法(マルチプル法)」は規模・業種が似ている上場企業の株価や企業価値を基準にして企業価値を算定する手法です。
上場している株価をベースとするため、客観的・公平な算定が可能です。
しかし価値の正確性を高めるためには類似企業を複数選定する必要があり、類似企業が少ない場合や1社もない場合は用いられません。
市場株価法
「市場株価法」は市場で取引されている株価を基準にして企業価値を算定する手法です。
上場企業の場合はよく使われますが、未上場の中小企業では利用できません。
類似会社比準法など他の手法にて企業価値を算定しましょう。
将来性も考慮する「インカムアプローチ」
「インカムアプローチ」は将来生み出すであろう利益を基準に企業価値を算定する方法です。
コストアプローチやマーケットアプローチは現在や過去の業績に注目し、未来については考慮していません。
しかし買い手側はM&Aによってシナジー効果や利益向上を期待しており、将来性が見込める場合は多少高額でも納得します。
ただし、あくまで予想でしかなく、売り手の期待も込められているため、正確に判断するのが難しいと言うデメリットが存在します。
インカムアプローチの代表的な手法には「DCF法」があります。
DCF法
DCF法は将来発生する利益を現在の価値に換算して企業価値を算定する手法です。
DCF法の計算方法は以下の通りです。
- フリーキャッシュフローを計算する
- 割引率を計算する
- 予測期間・永久成長率を計算する
- 現在価値を算出する
DCF法は数字を自身で設定でき、良い算定結果をもとに価格交渉しやすい点がメリットです。
しかし一方で、第三者が計算すると同じ結果が出ない可能性、つまりは「客観的・適正ではない」と判断されてしまいます。
DCF法によって売却価格を少しでも上げたいなら、結果を裏付けできる証拠・データを揃える必要があるでしょう。
まとめ
今回はM&Aでの売却価格の決まり方、つまり企業価値の算定方法を紹介しました。
売却価格の相場は存在せず、業績や顧客リスト・ノウハウなどによって企業価値を決めます。
具体的な算定方法は以下の通りです。
- 簿価純資産法
- 時価純資産法
- 類似会社比準法
- 市場株価法
- DCF法
それぞれメリット・デメリットが存在するため、状況に合わせて使い分け・併用をおすすめします。
自社内での算定が難しい手法もありますので、M&Aに詳しい専門家へ相談しましょう。
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