【事業承継・M&A】個人事業主が事業承継する場合の手続きについて注意点やポイントを解説!
個人事業主として成功している人は、引退とともに廃業…はもったいないですよね。
子どもや親族を個人事業主として引き継がせたい場合、税金や方法などが特殊です。
そこで今回は個人事業主が事業承継する場合の手続きについて注意点やポイントを解説します。
事業承継の注意点
個人事業主の事業承継は法人の事業承継よりも比較的シンプルですが、知っておかないと後悔することもあります。
個人事業主が事業承継する場合の注意点をまとめました。
注意点1.事業承継の方法によって課税される
個人事業主の事業承継には3つの方法が考えられます。
- 贈与
- 相続
- 売買(M&A)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
贈与
個人事業主の事業承継では、家族や親族・他人へ事業を無償で承継するケース(生前贈与)が多いです。
特に息子や妻へ贈与する場合は後継者の資質を十分知っているため、教育や準備がスムーズでしょう。
しかし、贈与する資産の中には現金・預金や商品なども含まれており、1年間の贈与額が110万円を超えると贈与税が課されます。
例えば親から子へ事業承継する場合、贈与額が200万円超400万円以下では税率15%(控除額10万円)がかかります。
事業を始める際に負担がかかってしまうと、その後の経営も苦しくなるかもしれません。
個人版事業承継税制や相続時精算課税制度を知っておくと節税になります。(※後述します)
相続
先代の死亡により、財産・債務を承継する場合は相続税が課されます。
遺言がない場合は話し合い(遺産分割協議)で決めますが、時間がかかると相続税の申告・納付期限に間に合わなくなります。
※相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月後です。
現経営者は万が一のために「誰に何を相続するか」を遺書に残しておくとよいでしょう。
売買(M&A)
売買(M&A)は親族ではなく第三者へ事業譲渡し、現経営者が金銭を受け取る方法です。
売却利益は所得税の課税対象となります。
引退後の資金を作れるものの、事業規模が小さいと買い手を見つけるのが難しいという点がデメリットです。
注意点2.手続きに期限がある
個人事業主が事業承継する場合、複数の書類を提出しなければなりません。
手続きの期限を過ぎると適用されないものもあるため、注意してください。
先代の手続き
- 個人事業の開業・廃業等届出書:事業廃止から1カ月以内
- 青色申告の取りやめ届出書:事業廃止する年の翌年3月15日まで
- 事業廃止届出書:廃止後速やかに ※消費税の納付義務がある場合
- 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書:第1期分・第2期分はその年の7月1日から7月15日まで、第2期分のみはその年の11月1日から11月15日まで
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書:事業廃止から1カ月以内 ※給与を支払っている場合
- 事業開始(廃止)等申告書:事業廃止から10日以内、死亡による場合は死亡日から30日以内 ※東京の場合。都道府県によって期限・書類名が異なる
後継者の手続き
- 個人事業の開業・廃業等届出書:事業開始から1カ月以内
- 青色申告承認申請書:青色申告をしたい年の3月15日まで、または事業開始から2か月以内
- 消費税課税事業者選択届出手続:課税期間の前日まで ※課税事業者になる場合
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書:開設・転移から1カ月以内 ※給与を支払っている場合
- 青色事業専従者給与に関する届出手続:給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(または開業日・専従者がいることになった日から2ヶ月以内) ※配偶者や親族に給与を支払っている場合
- 業開始(廃止)等申告書:事業開始から15日以内 ※東京の場合。都道府県によって期限・書類名が異なる
事業承継を成功させるポイント
個人事業主の事業承継を成功させるには、前述の注意点を踏まえて準備に取り掛かる必要があります。
事業承継を成功に導くポイントを確認しておきましょう。
ポイント1.早めに後継者を教育する
事業承継を検討している個人事業主は、早めに後継者を決めましょう。
個人事業では個人事業主 本人の知識と信頼で成り立っているケースがほとんどです。
現経営者が引退した後もビジネスが回るよう、後継者に経営知識やノウハウを教えなければいけません。
他にも、取引先へのあいさつや関係先への周知などにも時間がかかります。
引退の時期を決めているなら、3〜5年前から後継者選びに取り組むとよいでしょう。
ポイント2.節税対策を知る
個人事業主の事業承継には贈与税・相続税・所得税・消費税が関わります。
「相続時精算課税制度」と「個人版事業承継税制」を知っておくと税金の負担を抑えられるでしょう。
相続時精算課税制度
「相続時精算課税制度」は子どもや孫に生前贈与する金額が2,500万円までの場合、贈与税が発生しない制度です。
その後、贈与者(現経営者)が亡くなったときに贈与金額と相続財産の価値を合計した金額から相続税額を計算し、相続税として一括で納税します。
適用要件は以下の通りです。
- 贈与者(現経営者)が贈与した年の1月1日時点で60歳以上
- 受贈者(後継者)は贈与者(現経営者)の子または孫
- 受贈者(後継者)が贈与を受けた年の1月1日時点で20歳以上(令和4年4月1日以降の贈与については18歳以上)
「相続時精算課税制度」を利用する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告と一緒に「相続時精算課税選択届出書」を提出しましょう。
個人版事業承継税制
「個人版事業承継税制」とは個人事業主の事業承継において、円滑化法の認定を受けた者が特定事業用資産を取得した場合には、贈与税・相続税の猶予や納税が免除される制度です。
主な適用要件はこちらです。
- 後継者が贈与日の時点で20歳以上(令和4年4月1日以降の贈与については18歳以上)
- 経営承継円滑化法の認定を受けている
- 後継者が贈与の日まで特定事業用資産に係る事業に3年以上従事していた(※贈与税の場合)
- 贈与税の申告期限までに開業届出書を提出し、青色申告の承認を受けていること
- 特定事業用資産に係る事業が、資産管理事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと
後継者である受贈者・相続人には細かい条件が決められているため、国税庁のホームページを確認するか専門家に相談してください。
ポイント3.専門家に依頼する
個人事業主の事業承継には納税の手続きや資産の評価など、煩雑な作業を行わなければなりません。
事業に加えて、後継者の育成・事業承継の準備を進めるのはとても大変です。
特に書類の提出期限を過ぎると適用されないものもあるため、もし提出が漏れてしまうと後継者に迷惑がかかるかもしれません。
「相続時精算課税制度」や「個人版事業承継税制」など節税対策を知らなければ、納税金額にも大きな差が出るでしょう。
自分ひとりで全部対応しようとせず、事業承継にかかわる手続きは専門家に依頼しましょう。
まとめ
今回は個人事業主が事業承継する場合の手続きについて注意点やポイントを解説しました。
事業承継では方法によって課税され、提出書類の期限も短めに設定されています。
初めての手続きで慣れないことも多いと思いますが、失敗してしまうと後継者に影響が及ぶ可能性が考えられます。
今後も事業を継続するために、以下のポイントを抑えましょう。
- ポイント1.早めに後継者を教育する
- ポイント2.節税対策を知る
- ポイント3.専門家に依頼する
個人事業主で事業承継を検討している方は、まず専門家への相談をおすすめします。
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